ひとつじゃないインドカレー — 北と南でこんなに違う
「インドカレー」という言葉を、わたしたちは無意識に“ひとつの味”として思い描きます。けれど旅をするように地図を広げると、その思い込みはやさしくほどけていく。土地が変われば、空も水も、祈りのかたちも変わります。料理とは、その土地が長い時間をかけて出した“答え”の集まりなのです。
えっ、インドのカレーってぜんぶ同じじゃないの?
ぜんぜん違うんだよ。ぼくの故郷は広い。北と南じゃ、主食からして別ものなんだ。
そもそも、インドに「カレー」という料理はない
意外に聞こえるかもしれませんが、インドには「カレー」という単一の料理は存在しません。地域ごとに無数のスパイス料理があり、それらをまとめて “curry” と呼んだのは、後からやってきた人々でした。名前がひとつでも、中身は無数。これは、ものごとを“ひとことで分かった気になる”ことへの、静かな問いかけでもあります。
北インド — 小麦・乳製品・濃厚なグレービー
ナンやロティといった小麦のパンを主食に、生クリームやバター、カシューナッツでコクを重ねた濃厚な煮込みが中心です。タンドール窯の文化があり、バターチキンやコルマが代表格。寒さの残る土地が育んだ、体をあたためる豊かさがそこにあります。
ナンと食べる、あのこってり系か。なるほど。
南インド — 米・ココナッツ・さらりと酸味
主食は米。ココナッツのコクとタマリンドの酸味、カレーリーフやマスタードシードの香りが効いた、さらさらの汁物が主役です。サンバルやミールス(定食)が象徴的。暑い土地では、重さよりも軽やかさと酸味が、食欲をそっと支えます。
同じ国なのに、こんなに違うんだ…!
東(ベンガル)— 魚とマスタードオイル
川と海に恵まれたベンガル地方では、魚介のカレーが豊富です。ツンと辛みのあるマスタードオイルで仕上げる独特の香りは、その土地でしか生まれなかった個性。料理は、手に入るものへの感謝から始まるのだと教えてくれます。
次にインド料理店の扉を開くとき、看板の「北インド」「南インド」という言葉に、ぜひ目を留めてみてください。一皿の向こうに、広い大地と長い時間が見えてきます。気になった店は、アプリ「カリータベタイ」の“タベタイ”に。あなたのカレー地図が、少しずつ広がっていきます。
次はどの地方を旅する? 一緒にめぐろう。
